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医療情報「この病気ときちんと向き合う 肝臓がんその2」

医療費助成制度を活用して、積極的な治療を

気になる場合はお気軽に肝臓外来を受診してください。肝臓がんの予防は、まず検査から。定期的に健康診断を受けましょう。

診療スケジュール及び健診は、
肝臓外来」スケジュール、「健康診断・人間ドック」、「プチドックのご紹介」をご確認ください。

肝臓がんその1の記事はこちら。

肝臓は「沈黙の臓器」症状が全く現れないことも

肝臓がんの約90%はウイルス性肝炎から肝硬変へ進み、その後に肝細胞ががん化したものです。肝炎ウイルスは、A型からE型まで5種類ですが、日本でよくみられ、特に重要なのは、B型とC型の2つ。ウイルス性肝炎に起因する肝臓がんのうち、B型肝炎が占める割合は約15%で、C型肝炎は約75%を占めています。
肝炎ウイルスに感染しても、肝炎になるのを防ぐことができれば肝臓がん発症は免れるのですが、医療機関での検査以外に感染したかどうかを知る術はありません。
また、肝臓は「沈黙の臓器」と言われるだけに、肝炎になっても症状が乏しく、早期治療が難しいもの。B型の場合は、全身のだるさや食欲不振がみられ、やがて黄疸が出る場合もありますが、症状のない人も多く、C型はほとんど症状がないと言っても過言ではありません。よって、健康診断などで肝機能の異常を指摘されたことがあったり、過去に輸血を受けたり、家族に肝臓病の人がいる場合は、肝炎ウイルスに感染しているか否かを検査することが、肝炎や肝硬変、そして肝臓がん予防の第一歩です。
また、前号でもご紹介したように、ここ数年で、肝臓がんの約5%が脂肪肝から発症していることが明らかになっているため、健康診断でメタボリックシンドロームを指摘された人は、生活習慣を見直すことが大切です。 また、検査でいずれかのウイルスに感染していることが分かった人は、健康診断の際に「γ-GTP」や「γ-GOT」に注意を。この数値が高い状態は、ウイルスの活動が活発になることも覚えておいてください。

B型肝炎ウイルスの感染者は約150万人

現在、日本には、ほぼ生涯にわたって感染が継続する持続性のB型肝炎に感染している人が約150万人いると推測されています。B型肝炎は、感染した時期や感染した時の健康状態によって一過性と継続性に大別され、前者の大半は慢性化しないため、劇症肝炎と呼ばれる非常に強い肝炎が起こった場合を除けば治療は必要ありません。しかし、持続性のB型肝炎は肝細胞が常にウイルスの刺激にさらされることになるため、早期からの継続的な治療が望まれます。
慢性化したB型肝炎の治療薬には、抗ウイルス作用と免疫増強作用がある注射薬「インターフェロン」と、ウイルスの増殖に必要な酵素の働きを阻害することによって、強力な抗ウイルス作用を発揮する内服薬「核酸アナログ製剤」の2種類があります。
大まかにいうと、インターフェロンは一般に年齢が35才程度までの若年者で肝炎の程度の軽い人に、核酸アナログ製剤は35歳以上もしくは35才以下であっても肝炎の進行した人に対して投与します。インターフェロンで効果が見られるケースは30~40%。治療開始当初に風邪のような症状や血小板の減少などの副作用が現れますが徐々に落ち着き、数週後にはほとんどの人が出現しなくなります。一方、核酸アナログ製剤はウイルス量が低下し、服用中に肝炎は起こりません。 ただし、一旦開始した核酸アナログ製剤の服用をやめると、肝炎が急に悪化することがある為、勝手な判断は危険です。

インターフェロンの注射と飲み薬の併用でより効果が

肝臓がんの約75%もの原因になるC型肝炎の治療については、インターフェロンによって約50%の人が完治します。また、以前は週3回24週の投与が必要でしたが、「ペグインターフェロン」という薬剤が開発されたことにより、現在は週1回で済むようになりました。さらに、近年は「リバビリン」という飲み薬を併用することで、より高い効果が期待できるようにもなっています。 まだ一般的に使用できる状況ではないものの、95%が完治する新薬も登場しています。
患者さんの全身状態やウイルス遺伝子の型、ウイルスの量などによってインターフェロンの効き方には個人差があり、すべての患者さんのC型肝炎ウイルスを排除できるわけではありませんが、肝臓がんの発生を予防する目的でインターフェロンを少量長時間用いる方法もあるほか、インターフェロンが使えない場合は、他の薬剤により、肝機能を正常に保って肝炎の進展を防止する「肝庇護療法」がとられます。
日本にはC型肝炎ウイルスの感染者も、約150万~200万人いると考えられています。ただし、感染がわかっていない人やわかっているのに通院していない人も多いため、実数はもっと大きいかもしれません。 そこで、厚生労働省では「国民が自身のC型肝炎ウイルス感染の状況を認識し、その結果に基づいて必要な診療を受けることが重要」という観点から、さまざまな施策に取り組んでいます。

厚生労働省が収入に応じた治療費の補助を実施

まず、健康診断時の検査(一部無料)に加え、保健所や委託医療機関において肝炎ウイルス検査が無料で行われています。 また既に感染が診断されているウイルス性肝炎については、平成20年度からインターフェロン治療に対して医療費助成が始まり、従来からの施策と合わせた新たな総合対策を実施することとなりました。 C型肝炎をはじめとするウイルス性肝炎は国内最大の感染症と言われる一方、インターフェロン治療が功を奏すれば根治が可能であり、その結果、肝硬変や肝がんいったより重篤な病態への進行を防止することができるのですが、これまでは3割負担でも月に3~6万円という高額な費用が治療をためらわせる一因に。
そこで、平成20年4月から各自の収入に合わせて自己負担額が月額1万円から5万円までに軽減されるよう補助がでることになり、さらに平成22年4月からは自己負担の上限額が1、2万円に下げられています。 また、B型肝炎の治療薬・核酸アナログ製剤にも各自の収入に合わせて1、2万円を超える費用に関しては補助が出ます。
是非活用して肝炎を克服しましょう。